CASE STUDY 地域の移動 参考事例 CASE STUDY 地域の移動 参考事例

  • 導入事例
  • フィンランドの画期的な地方版ライドシェアサービス

送迎客と一般客を相乗りさせることで移動弱者を減らすフィンランドの画期的な地方版ライドシェアサービス

病院、学校、介護施設などの送迎客と一般客が相乗りできるライドシェアシステムの導入により、移動弱者対策と利用者の利便性向上を両立したフィンランドの地方版MaaSサービス

課題
地方における移動弱者向けの交通サービスの利便性向上と財政負担の抑制
ポイント
病院、学校、介護施設などの送迎客と一般客が相乗りできるライドシェアシステムを導入
結果
財政負担の大幅な抑制と一般客向けの安価な移動サービスの提供
継続性
国がMaaS推進の規制改革を進めたことで事業化に適した環境が整った

地方における移動弱者向けの交通サービスの利便性向上と財政負担の抑制

フィンランドの人口密度の低い地方では路線バスのような公共交通が整備されておらず、通学、通院、介護施設への往復、障碍者施設への往復など、生活維持のために必要となる移動については国や地方政府の負担で必要最低限の移動サービスが提供されている。しかし、多くの車両が乗客1名という非効率な状況となっていること、国や地方政府の財政負担が重くのしかかっていることからMaaS(Mobility as a Service)などを活用した新しい社会システムによる課題解決が求められていた。

病院、学校、介護施設などの送迎客と一般客が相乗りできるライドシェアシステムを導入

  • 車両とアプリのイメージ図

Kyyti社は2016年からフィンランドでモビリティサービスを提供しているスタートアップ企業である。同社が提供する地方版MaaS(rural MaaS)は完全に自動化された配車システムを交通事業者に提供することで、乗客はスマホまたは電話で乗車予約ができる仕組みとなっている。病院、学校、介護施設などの送迎客は税金で移動費の大半が賄われることから4~5ユーロ(500~600円)でタクシーに乗車できるが、一般客は同社のシステムを使うことで送迎客とのライドシェアが可能となり、安価でタクシーを利用できるようになった。交通手段が限られている地方において、異なる目的の利用客を統合することで効率的な交通システムを実現した画期的なサービスである。

財政負担の大幅な抑制と一般客向けの安価な移動サービスの提供

地方版MaaSの導入により、タクシーの一人乗り乗車が減少し、国や地方政府の財政負担の大幅な抑制が実現しつつある。また、一般客が単独でタクシー利用する場合は料金が高くなるが、補助金で移動費が賄われる送迎客とライドシェアすることで料金を安価に抑えることが可能となった。ライドシェアの車両については定員(通常は3~15名)、車いすの搭載可否などの情報が提供されているので予約時に適切な車両を選ぶことができるという。また、重篤患者の送迎の場合は相乗り不可にするなど送迎客の事情にも配慮したシステムとなっている。赤字バス路線や経営の苦しいローカル鉄道を抱えている日本の地方部においても参考にすべき交通サービスである。

国がMaaS推進の規制改革を進めたことで事業化に適した環境が整った

交通サービス法のイメージ

Kyyti社がこのサービスを提供しているのは首都ヘルシンキの北西にあるMikkeli(ミッケリ)というエリアとフィンランド内陸部のピルカンマー県の2カ所であるが、スイス、アメリカ、ベトナム、オランダへの海外展開も進めつつあるとのこと。同社がこのような事業を行えるようになった理由として、フィンランド政府の運輸通信省がMaaSの導入を可能とする規制改革を積極的に進めてきたことが背景にある。2018年から施行されている交通サービス法では交通事業者に対して交通データのオープン化を義務付けるとともに、ライドヘイリング(相乗りサービス)の規制緩和が行われた。これによってMaaSをビジネスとして展開できる環境が整いつつある。

路線バスがなくタクシーが地方の公共交通を担っているフィンランドの制度

日本では公共交通というと鉄道や路線バスが常識であり、タクシー移動を税金で負担するという発想は全くないが、フィンランドではタクシー移動を補助する仕組みが大前提となっている。そのため地方のタクシー会社の収入の8~9割は国や地方政府の補助金であるという。人口密度の低い地方における移動弱者対策や今後の公共交通のあり方を考えるうえでフィンランドの制度は参考になるのではないだろうか。

取材協力

・フィンランドKyyti Group Ltd. CEO Mr. Pekka Möttö(ペッカ・モットー氏)