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地域の魅力を再発見してもらいながら、新たな路線バス利用者の獲得を目指す会津若松の「バスあるきっぷ」

福島大学の学生、会津バス、会津若松市役所などが地元商店などに協賛を依頼し、子育て世代や健康志向の高い女性等を主な対象にした割引クーポン付バス切符を提案。

自家用車の普及や人口減少などによって利用者減少が止まらない地方の路線バスの新たな利用者獲得とまちなか回遊による賑わい創出を狙う。

課題
中心市街地の衰退と利用者減少が止まらない路線バスについての対策が求められていた
ポイント
自家用車依存度が高く、親子双方に路線バス体験の少ない子育て世代等を主な対象に、
飲食や体験型サービスなどと連携したお得なバス切符を企画し、販売
結果
乗客の反応は非常に好評で「想像以上に街歩きを楽しめた」という声も
継続性
過去に会津バスが福島大学の学生と企画した切符が同社の自社サービスとして採用されており、今回も結果次第ではサービスとして提供することを検討中

中心市街地の衰退と利用者減少が止まらない路線バスについての対策が求められていた

自家用車の普及と人口減少によって会津若松市の路線バスは利用者減少が止まらない状況にあり、高齢者と高校生が利用者の大半を占める現状となっている。百貨店などの撤退によって中心市街地の荒廃が進んでいることも利用者減少に拍車をかけている。

そこで、新たな利用者獲得と中心市街地の賑わい創出のために、普段は路線バスを利用していない地域住民の利用を促す対策が求められていた。

自家用車依存度が高く、親子双方に路線バス体験の少ない子育て世代等を主な対象に、飲食や体験型サービスなどと連携したお得なバス切符を企画し、販売

路線バスの新たな利用者を獲得するにあたって、普段の利用者である高齢者や高校生ではなく、地元の生活者を対象にした企画としてスタート。

人口などの様々な統計データを福島大学の学生が分析したところ、高校までは地元にいてその後は地域外に転出してしまう人が多い一方で、子育て世代の多くは地元に残っていることが多いことが判明。また、「乗り物」としてのバスに乗ってみたい子どもは潜在的にかなり多くいることから、子どもがバスに乗りたいと言えば、親は路線や時刻表を調べて路線バスに乗ってみるだろうと考え、自家用車依存度が高く親子双方に路線バス体験の少ない子育て世代=ファミリー層等を主なターゲットにすることとなった。

路線バスを新たに利用してもらうためには「目的」が必要であることから、福島大学の学生、会津バス、会津若松市役所などが中心市街地の商店や飲食店などに協力を要請し、路線バスに乗車すれば協賛している飲食店やアミューズメント施設などの割引クーポンが入手できる切符として企画したものが「バスあるきっぷ」である。このような切符の販売により、バスに乗ってみたい子どもにPRし、同時に自家用車依存度が高い親世代にもバス利用を促すことで、路線バスを頻繁に利用してもらえることを狙っている。

数年前に会津バスと福島大学の学生が企画した観光客向けの割引クーポン付バス切符である「おちょこパス」を実施したことが背景となっている。会津若松市役所によると、学生が自ら商店や飲食店を訪問して協力依頼するため、市役所の職員から依頼するよりも協賛への協力を引き出しやすいという効果もあったとのこと。

乗客の反応は非常に好評で「想像以上に街歩きを楽しめた」という声も

11月下旬から3月下旬までのキャンペーンとして実施しているが、11月22日から8日間での実績としては開始初日に体験ツアーを行ったこともあり、合計48枚利用されたとのこと。

乗客の反応はとても好評であり、この企画がきっかけで初めてバスに乗った方も多かったようだ。また、普段はなかなか自分の街を歩く機会がないので、想像以上に街歩きを楽しめたという方も多くいた模様。

過去に会津バスが福島大学の学生と企画した切符が同社の自社サービスとして採用されており、今回も結果次第ではサービスとして提供することを検討中

3年ほど前に会津バス、会津若松市役所などが福島大学とのコラボレーションで行った取り組みとして「おちょこパス」がある。「ハイカラさん」「あかべぇ」という観光路線バスがあり、その一日乗車券におちょこなどの特典を付けたのが「おちょこパス」であり、公共交通を利用することでおちょこを使って酒蔵をめぐる“飲み歩き”ができることを狙った商品である。

会津バスの協力を得て学生が自ら店舗側に協賛依頼の交渉をしたことで、店舗側の協力が得られやすかったという効果もあり、おちょこパスは成功を収め、企画に協力した会津バスがそのまま自社サービスとして提供している。

「バスあるきっぷ」はおちょこパスの延長線上にある商品として位置づけられており、おちょこパスの前例があったことからバスあるきっぷについても協賛が得られやすかったという経緯がある。そのため、バスあるきっぷについても一定の利用者確保が見込めるようであれば会津バスが自社サービスとして提供していく意向あり。

交通空白地でのモビリティサービスの成功事例となった「さわやか号」

会津若松市では、交通事業者による交通空白地域におけるコミュニティバスの実証運行が不調に終わったのち、利用者や地域住民が運行再開に向け検証や議論を重ね、地域住民が運営主体となった住民コミュニティバス「さわやか号」として運行を再開させることに成功し、平成29年度に国土交通大臣表彰を受賞した。

成功した理由はランチ会や乗車体験ツアーなど利用者を維持するために地域に根ざした利用促進に取り組んでいること、バス利用とランチや体験など"目的"や"楽しみ"をパッケージにして提案することで安定的な利用に結びついていること、これらの取り組みが結果的に高齢者の外出支援や地域コミュニティの活性化につながっていることが挙げられる。

交通空白地域のモビリティサービスを提供する際には、車両やシステムなど移動にかかる物理的な要素だけでなく、地域住民同士のつながりなどコミュニティの要素が重要となることを示唆する取り組みと言える。

取材協力

会津若松市役所
・観光商工部 商工課 中心市街地活性化グループ 主査 大村 守雄 様
・企画政策部地域づくり課 公共交通グループ 主査 柏木 康豪 様
会津乗合自動車株式会社
・営業企画部営業企画課 主任 大塚 泰知 様
・バス・タクシー事業部 輸送管理課 穴沢 信之助 様
・営業企画部 営業企画課 山田 日向子 様
福島大学
・教育研究院 准教授(経済経営学類担当)うつくしまふくしま未来支援センター 地域復興支援部門副部門長 吉田 樹 様
福島県 商工労働部商業まちづくり課
・主任主査 笹川 純 様
・主事 伊藤 拓成 様